vol.42 鍵は「正確」で「スピード」のある情報 OBPエリア防災訓練はアプリ活用でレベルUP

2020年10月21日、今年もOBPエリアのOBP帰宅困難者避難誘導訓練(以降、防災訓練)が実施されました。6年目を迎える本年は、withコロナのもとで実施。規模や実施内容も気を遣いながらの訓練となりました。
それでも訓練は進化しています。キーワードは「情報活用」。果たして昨年との変化はどこなのか?今年もばっちり取材しました。

コロナウイルス感染対策のために規模を抑えても、内容は進化

例年よりも規模を抑えて、しかし内容は進化

あちらこちらで影響を及ぼしている新型コロナウイルス。本年の防災訓練も例外ではありません。本年は密を避けるため避難行動は自粛となり、各ビルの防災担当者のみの参加で執り行われたのでした。
とは言え、昨年から防災担当者の行動内容はバージョンアップ。
大きな変化は、アプリ「LINE WORKS」を取り入れ、情報のやりとりをスムーズにした点です。
LINE WORKSは、従来の無線でのやりとりと違い、一斉に文字や写真で双方向の情報を共有できるのが強みのサービスです。

災害時のポイントは情報の正確さと早さ

災害時のポイントは情報の正確さと早さ

OBPエリアには各ビルから選出された2〜3名が、防災担当スタッフとして訓練本番の前後に会議を重ねています。本年も、本番の流れを確認する事前会議がTWIN21 MIDタワー 20階会議室にて行われました。

OBPエリアは住居がないため、ワーカーや来訪者を帰宅困難者にしないこともポイント。
発災後、各ビルでの待機・誘導を行うため、エリア全体として正しく情報を共有するのが本訓練の目的です。

東日本大震災の際、東京では515万人という規模の帰宅困難者が発生したそうです。
その原因は、発災時の鉄則である“むやみに行動しない”ことの徹底がされなかったことと “事業所が帰宅を促した”という2点だったそうです。
この事例を踏まえ「正確で、早い情報」がキーポイントとなることが、会議にて共有されました。

本部・各ブロックともに小規模の訓練に

本部・各ブロックともに小規模の訓練に

通常であれば、OBPエリアに入居する各社からワーカー1〜2名が訓練当日に避難行動をするという大所帯。しかし、今回は防災担当者のみで実施されました。
担当者は、リーダー、サブリーダーをはじめ、救護係、情報係、現場対応係といった各自の持ち場があります。

本部・各ブロックともに小規模の訓練に

拠点は昨年同様、ツイン21ビルの南プラザに災害対策本部を構えるほか、5つのブロック(南プラザ・IMPビル/読売テレビ新社屋ビル間・東京海上日動ビル・クリスタルビル・OBPキャッスルタワー/ホテルニューオータニ間)毎に「情報連絡拠点」が設置されます。
発災直後の各ビルでの自助体勢を経て、ビル間での共助体勢へ移行を想定したシナリオをもとに、拠点の設置をスタート。順次無線から届く情報に耳を傾けながら、各自の持ち場を徹底します。

本部・各ブロックともに小規模の訓練に

また、初めての防災担当として参加する方も毎年数名おられるので、慣れているメンバーが教えつつ進める様子も見られました。
テント設営が早々に終わったブロックの方にお話を聞いてみると、
「ここのブロックはビル1棟なので、メンバーも知った仲。動くにも小回りが効きます。複数のビルが集まっているブロックはビル同士の連携が必要になるし、避難するワーカーの数も多いので、もっと大変なのではないかと思います。」
とのことでした。

実際に震災が起きた場合、ブロックの共助の準備をスムーズに行えるように、継続した訓練が求められます。

試験運用された「LINE WORKS」

新たに試験運用された「LINE WORKS」

いかに「正確で、早い情報」を防災担当者に漏れなく伝えていくかがポイントとなる今回の訓練。
導入されたのは「LINE WORKS」というアプリでした。LINE WORKSは多くの方が連絡手段として利用する「LINE」のビジネス版アプリです。

事前会議にてインストールし、いざ本番。各ブロックからの被害等の状況報告や拠点設営状況は、LINEWORKSを通じて災害対策本部に送られます。また、本部からは随時、災害の規模や被害状況、ライフライン、交通機関や周辺の状況等の災害に関する情報を各ブロックに発信していきます。
利用してみての声を防災担当者に聞いてみました。

新たに試験運用された「LINE WORKS」

リーダーを担当していた方は、
「普段使う『LINE』とは操作が若干違う点や、写真の送信などに慣れておらず手間取りました。覚えてしまえば楽ですし、便利ですよね。」
とのこと。
また、別のブロックの情報係を担う方によると、
「情報を写真で送れるのは、現場の状況がひと目で分かるので非常にわかりやすいと思います。オペレーションや、操作面では慣れが必要になりそうです。」
と、同様の意見が出ました。

アプリの利用は便利な一方で、個人のITリテラシーや経験値に頼らざるを得ない点が見えてきます。

徒歩で帰宅するリアルなイメージが必要

徒歩で帰宅するリアルなイメージが必要

今回対策本部の副本部長を務めた讀賣テレビ放送株式会社の山本さんにお話を伺いました。
「自社の避難訓練でもLINE WORKSを用いた情報伝達はしたことがなかったので、今回の取組は参考になりました。
毎年出る反省点に『リアル感を持つ』ということがあります。多くの方がリアルに認識するのが難しいのではないかと思います。自分自身、阪神淡路大震災は激震地区におり、ベッドから振り落とされるような経験をしていながら、訓練の時はどこか“訓練”だと捉えている部分があります。
LINE WORKSでどこまでリアル感を出せるかは、一つの鍵となるのではないかと思います。」
と、LINE WORKSについて見えた課題をお話くださいました。

また、訓練でもう一つ意識してほしい点を次のように言われます。
「OBPのエリア防災は、いかに帰宅困難者を出さないかだと思います。大阪、京都、兵庫など、多くの方が京阪神地区から通ってきていることでしょう。発災直後は基本的にはビルでの待機、避難誘導のもとの行動になりますが、滞在期を過ぎてからの徒歩で帰宅できるルートはポイントだけでも頭に思い描けるよう準備が要るのではないでしょうか。」

エリア内での避難を終えても、そこから帰れるかどうかは各自の判断に委ねられます。防災担当者だけではなく、一人ひとりの意識は必要不可欠となるでしょう。

ひとつひとつ着実に染み込ませる

ひとつひとつ着実に染み込ませる

毎年避難訓練のシナリオを作成されている、有限会社 創遊計画の松原さんは、災害対策本部での情報分野を担います。OBPエリア防災の立役者と言える松原さんも、今回の訓練を振り返ります。

「山本さんが仰る通り、リアル感を持つことは難しくも大変大切なことです。訓練本番が年に1度ですから、どうしても多くの防災担当者が『スムーズにこなさなければ』と考えてしまうと思います。しかし、“訓練のための訓練”となってはなりませんから、今後も一歩ずつですが、着実に感覚を染み込ませられるように取組んでいきたいです。
今年はコロナ禍でワーカーの方の避難訓練までは実施しませんでしたが、毎年避難誘導を担当している防災担当者の中には『誘導をやりたかった』という声もあったので、少しずつ意識が高まっていることも感じ、嬉しく思いました。」

また、LINE WORKSの実施に関しての所感は、
「メリットとして、文字のやりとりで情報が残り後追いできる点、同時に多くの方が誰でも発信できる点があります。
ただし、LINE WORKSの無料枠はユーザー数が100名までという制限がある点がデメリット。防災担当者内ではこれで十分ですが、ワーカーの方々まで情報が広がるためには、本部から発信するSNS(城まち大阪Facebook城まち大阪Twitter)の情報を、ワーカーの皆さんから積極的に取りにいっていただく必要があります。各SNSへの投稿の手間も含め、この辺りは今後も考えていきたいと思います。」
と話されました。

やりすぎることのない訓練

やりすぎることのない訓練

今年はしっかりとコロナウイルス感染対策を図るために例年とは異なる訓練となりましたが、やはり考えるポイントは毎年同じで「リアル感を持って取組む」というところに落ち着きます。
訓練の日や、訓練の準備だけではなく、「今起きたらどんな行動が必要か」「自分自身は、家族との連絡方法や帰宅方法、水や食料の確保など日頃からどのようなことを準備しておくのか」等、各自のシミュレーションを重ねる必要があるでしょう。

OBPエリアに滞在する間は、行政やOBP協議会からの災害情報から、自分たちがどのような行動を取ればよいのかを考えて行動してほしいと思います。
そのため、こちらの記事や過去の記事が少しでも参考になれば幸いです。日々、意識をしていきましょう!

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