vol11 ワーカーが主体的に取り組むOBPミライ会議(2) ワーカーの声は未来へのヒント

ワーカー参加のOBPのまちづくり会議。2017年12月に続き、新年1月に2回目のセッションが行われました。
前回からの続きとなるOBP Style vol.11も、いよいよセッションが最終局面を迎えます。さて、どんな解決案が出されたのでしょうか。

OBPの課題を洗い出した1回目

1回目は課題の洗い出し

"OBP内で働いている"ことを共通点として集まった様々な立場のメンバー。12月開催の1回目では、それぞれに感じる問題意識を洗い出す回となりました。OBPの課題点は、「コンセプト面」「プライベート空間や機会」「イベントなどの仕掛け等ソフト面の工夫」「交通機能」「パブリックスペースの活用と維持」という5つに大きく分類され、日頃多くの時を過ごすワーカーならではのリアルな意見が飛び交いました。

「自分だったらこうしたい」を出す2回目

2回目

2回目のセッションでは1回目に出てきた内容に対し、具体的解決案を提案することがゴールになります。
そして、ポイントとなるのは「自分だったらこうしたい」という視点。
自分事として考えることを求められます。
2時間半のセッションは、第1ラウンド、第2ラウンド、第3ラウンドと話題を分けて行われました。第3ラウンドに入る頃にはいよいよセッションも佳境を迎えます。

他者との意見交換で広がる視野

3グループに分かれる

解決案は3グループに分かれ考えます。各々がOBPで過ごす"住民"として問われたそのテーマは、『OBP民が一緒に何かをするとしたら?』。
この段階に至るまでに、参加者の皆さんは他者の様々な意見をインプットする機会が与えられています。
自分なりに考えた案を他者の意見と比較したり、新たな角度で考えてみたりすることで、これまでの自分になかった閃きがおりたようです。

アイディア選び

最終的に個々で"my best"を探りますが、アイディアに溢れて絞れなくなる方も。

日々過ごすから出てくるリアルな想定

ディスカッション中

それぞれの解決案のコンセプトを決めながら、細かなディティールまでしっかりと話し合う場面では、「実際行うとしたら管理の面で問題があるのでは?」「OBPワーカーが帰るのは主に○時だから、そのタイミングを狙わないと…」「絶対ワーカーの多くがこれは欲しいはず!」「ビルの閉鎖時間で限度があるな…」など、実際の運用を考えたリアルな意見が飛び交いました。
これも日頃OBPで過ごす時間の多い皆さんだからこそ想定できる部分が多いのでしょう。

企業の垣根を超えた"共同"提案

共同提案

"共同"をキーワードとする提案は、企業や立場の垣根を超えて自由に考えられました。様々な職種やOBPでの経験値が混じり合って生まれたアイディアは、エリアの特性も活かすようなオリジナリティもありました。

チームA『レインボープロジェクト』

チームA

ビル・会社の枠を超えて交流を生むことを目的としたプロジェクト。「レインボー」は"色々" "何でもアリ"という意味を込めているそうです。
施設内外問わずOBPエリア全てを舞台としたイベントを企画し、「OBPは仕事だけではなく、みんなでOBPを創り上げている」という意識を高めます。

Aチームでは、このセッションを通じて話題になった、「家とビルを仕事のために行き来するだけで終わる」というワーカーの行動傾向に着目。
より回遊性を高めるための企画が必要だという考えから、ビル・企業の垣根を超えた企画と、参加者のメリットとして商業施設で使えるポイント制度を考えています。

チームB『OBPワクワク穴場ツアー』

チームB

こちらは、"大人の社会見学"をテーマに、OBP民がワクワクできるようなエリア内の穴場スポット見学ツアーを企画。
普段入ることが出来ないビルの屋上や穴場スポット、他社の社員食堂体験、各職場で働く姿や職場を見学するなど、大人の知的好奇心をくすぐるアイディアが盛り込まれた内容に。

イベント内容に「深夜のビルで脱出ゲーム」や「屋上ビアガーデン」などエンターテイメント性を色濃く出したBチームは、ディスカッションにおいてもブレーンストーミングで自由に話し合っていたのが印象的。
実現性の可否についてはメンバー自身も少し自信がなさそうではあったものの、傍聴者からは時々「お〜」という声なども上がり共感を得ている様子が見受けられました。

チームC『防災グルメパーティー』

チームC

「防災」という一つの軸に絞って考案したのはCチーム。
実際行われている防災訓練をベースに、脱出ゲームや救出ゲーム、防災食のランキング付け、大声コンテストなどゲーム性を盛り込むことで、交流を掛け合わせた"楽しめる防災訓練"を提案しました。

防災訓練はもともと定期的に行われている行事でもあるため、持続可能な交流を生み出す可能性も秘めています。
Cチームには実際にOBPの防災訓練へ参加したメンバーも。自らの経験をもとに「思わず参加したくなるような楽しい防災訓練を」と、企画に至った背景があったようです。

ワーカーの想いが現れた発表

ディスカッション

今回のワーカーの皆さんのアウトプットをファシリテーターの江口氏がどのように捉えているか伺った所、“分譲マンション”の世界に例えて説明されました。
「マンションの管理組合で参加しているのは親。子どもは各家庭から出ずにいて、他の家の子どもと遊んでいない状態。これが企業とOBPワーカーの状態と言えます。ワーカー同士が何かしようと動くのは子どもたち同士で何かをやりだすこと。実は『隣の家の子はどんな子だろう?』と密かに興味を持っていても、『何かしよう!』と思い立つようなきっかけがこれまでなかったとも言えます。」と語られました。

また、最終発表で出された3チームの案について次のように分析されます。
「一般的に地域やエリアをつくる立場で考えると、恐らくイベント要素よりは“ゴミ拾い”などの定常的な活動を期待するでしょう。しかし、それをいきなり『はい、始めましょう』ではなかなかまとまることができない。なぜなら、そこにいるのは完全な他人であり、コミュニケーションが成り立っていない状態だからです。まずはイベントのような参加しやすいものによって“知り合うきっかけ”を作り出し、顔見知りが増えて初めて進むこと。
それを踏まえると、今回3チームが出したイベント企画の案というのは、まずはOBPワーカーが会社から外に出て、隣のビルや他の会社の世界を見たいのだという想いの現れではないかと思います。」

様々な角度での対話・努力の継続が必要不可欠

江口氏はOBPの現状を次のように語られます。
「地方自治・行政の分野でも『住民主体のまちづくり』が叫ばれていますが、地域によってかなり温度差があります。ゼロから始めて『住民主体で』まちづくりが軌道に乗るまでには、5段か6段くらいの階段を登らないといけない。それは、放っておいて自動的に進むものではなく、最初のうちは仕掛け人たちが丁寧に土壌を作り、種をまいて、水をやるなど、うまく育てる必要がある。OBPの状況は詳しく知りませんが、冷静に『ワーカー主体のまちづくり』がどうかと見ると、まだ1段目をあがりかけの状態ではないでしょうか。今回のセッションの熱気を次につなげるためには、あの手この手で土壌を耕す努力を続けることが不可欠だと思っています。」とのこと。

さらに、「今回はワーカーの意見を集める取り組みでしたが、OBPのまちづくりにはまだまだ無限の可能性があります。ワーカー以外にも、国内外からの大阪城・OBP・京橋エリアへのビジター、周辺地域の住民や事業者、そして実際にまちに関わる事業者や団体、さらには行政など、多様な関係づくりの上でビジョンを練り上げることができれば、スゴイことになるでしょう。」とOBPが秘めている可能性についても話されました。

“普段会えない人たち”だから意味があった

参加者たち

普段会うことのない人が集まり交流することで、緊張感がありながらも、ディスカッションを通じ新しい視点が増えることを楽しんでいた参加者の皆さん。
共通して出てきた感想は、「他者の意見を受けて発想の幅が広がった」「自身の立ち位置や問題意識がより明確になった」「初めての方々との意見交換は意外性があって楽しめた」など、知的好奇心をくすぐられた様子。

心にあった問題意識や疑問を他者と共有することで、自分自身が明確な形として認識できたこと、また、今まで知らない人だったけれどOBPワーカーだという共通項で繋がり共感が生まれたことに、まず意味があったのかもしれません。

ワーカーの持つ視点への驚きと感謝

ワーカーの視点

今回のセッションには、OBPの地権者のひとつでもある関電不動産開発株式会社からオブザーバーとして3名の方が参加されました。
その中の一人である藤田氏は、セッションの参加者の意見に決して諦めムードがあるのではなく“思い入れ”が意見の中に感じられ、『OBPも捨てたもんじゃないな』と強く思われたそうです。
「自分は地権者の立場で建物本体・躯体・街の景観がメインとなった観点から物事を考えて取り組んでいこうと考える一方で、OBPワーカーの皆さんの着眼点は、普段の何気ない景色に着目していることを知った。ライフワークの中のひと時を見ている意見に驚きました。」と、その理由を語られました。

また、今後も地権者の一員として「少子高齢化社会での“人にやさしい街づくり”、“疲れた体を癒す空間”の提供、“災害時の安心”を提供できるといった、ワーカーが活き活き、ワクワクできる街が実現できればと感じる。」と話され、
「ワーカーの皆さんには、自己の欲だけでなくOBPの将来像を見据えた上での要望を持っていただきたいのと、大阪で、そして日本で、心の底から誇れる“OBP”のためご協力いただきたいと思います。何よりも、OBPの強みや良さをしっかりと認識していただいていることに正直感謝したいです。」と参加者の皆さんについてお話されました。

対話の“継続”が重要

舟越事務局長

今回のセッションについて、OBP協議会の舟越事務局長にお話を伺ったところ、「一連の意見を見ると、参加者の皆さんが真剣に考えて下さっていることがよく伝わります。そしてこのように投げかけた時にきちんと返してくれるということは、これまで考える機会、意見を言う機会があまりなかったのだなと感じます。」
と、受け止められると同時に、
「今回ご意見をくださった方々には是非形にすべく引き続き参加していただきたいし、何かあれば協議会へ気軽に話しに来ていただきたいです。」とワーカーの方々への期待を覗かせます。

また、今後OBP協議会では組織構成をパワーアップする予定だそうで、今後は施設や設備等のハード面に加え、人が集まるためのにぎわい活性イベントや、今回の様なワーカーの方々から意見を聞く機会を継続して行うなど、ソフト面の強化も努められるとのこと。
ソフト面では特に“対話”を継続し、あらゆる角度から意見交換を行うことが大切だと語られました。

ワーカーの意見はOBPを変えるヒントを持っている

セッション参加者

2回にわたって行われた「未来を考えるフューチャーセッション」。
ワーカーはエリアの未来に対して真剣であることが伝わるものでした。
自分の意見がOBPのまちづくりへ反映されることに期待を持っており、意見を言えないこと、意見を言っても受け取られないことへのフラストレーションさえ持っているのかもしれません。

OBPのまちづくりには、今後もワーカーやOBPに関連する人々の声を聞く取組みを継続的に行う必要があります。これまでの30年を超えて、更に進化するエリアをつくるのは特別な技術ではなく、人の交流の力なのかもしれません。
OBPの大いなる発展のヒントに溢れたセッションでした。

Wanted!

OBP Style では、特集記事のネタを募集しています。
OBP内のイベントや活動、人、場所あるいはOBPに対する疑問、もっと知りたいことなど。
大阪ビジネスパークに関するテーマ限定ですが、様々なテーマを掘り上げていく予定です。
ぜひこのテーマをというのがおありでしたらご一報ください。
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