vol.26 様々な企業との共創を考えるNEC ビジネスでめざす「誰一人取り残されない世界」

最近街中で目にする機会も増えてきた「SDGs(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))」。OBP Style読者の皆さんも関心が高まってきているのではないでしょうか?
NEC関西ビルでは2019年6月4日、そんなSDGsをビジネスと絡めて考えるワークショップが行われました。OBP Style vol.26はイベント取材を通じ、「誰ひとり取り残されない世界」の実現に向けた新たな取り組みをご紹介します。

NEC関西ビルには対話する場所がある

NEC関西ビルには対話する場所がある

会場となったのは、NEC関西ビル(OBPキャッスルタワービル)の2階にあるNECの共創施設「NEC Future Creation Hub Kansai」。
これまでは商談や製品のショールームとして運営されてきた場所とのことですが、今秋に大型リニューアルを予定されており、今以上に対話と共創が生まれる場所へと生まれ変わることに期待が膨らみます。
イベント終了後も、参加者の半数ほどが展示エリアを見学。NECの技術を目の当たりにし、時折「おぉ〜」という声も上がるなど、ワクワクされていました。ワークショップで出てきたアイディアのヒントを得られたのかもしれません。

SDGsの課題解決に事業を絡めて考える

SDGsの課題解決に事業を絡めて考える

さて、今回行われたイベント「SDGs×レゴ®ワークショップで、新規事業開発のヒントをつかめ」は、昨今企業の取り組むべき課題とされているSDGsの観点から、どのように新規事業が課題解決に役立てられるかをグループで考えていきます。

このイベントへ集まった参加者は、所属されている部門に偏りもなく、会社員、経営者、個人事業主、学生と様々。中には名古屋、広島といった大阪府外から駆けつけられた方もおられたようで、規模・立場・拠点などを問わず集まられました。
もちろんOBPエリアのワーカーも半数ほど参加。グループでは積極的なディスカッションや和気あいあいとした会話が見かけられ、ここから新しいご縁も生まれたのではないかと感じられる空気でした。

ビジネスパーソン注目のレゴ®ワークショップ

ビジネスパーソン注目のレゴ®ワークショップ

今回のワークショップの進行役を務められたのは、NGO(非政府組織)こども国連環境会議推進協会(通称:こども国連)の井澤友郭(いざわともひろ)氏。こども国連では、子どもたちにこれからの未来を生き抜き、変えていく力を身につける学びの場を提供しています。

そして、今回のワークショップでは、レゴ®シリアスプレイ®というメソッドが活用されました。このメソッドは、2001年にデンマークで生まれた組織のための問題解決メソッドで、NASA・Google・Yahoo!など世界規模の企業が導入しています。
このメソッドの公認ファシリテーターでもある井澤さんのもと進められたワークショップでは、みるみると身近に潜む問題が浮き彫りにされ、会を終える頃には各々のビジネスを絡ませた具体的なヒントまで辿り着くものでした。

レゴ®ブロックがコミュニケーションの精度を上げる

レゴ®ブロックがコミュニケーションの精度を上げる

レゴ®ブロックを活用した自己紹介を進めるうちに、参加者はひとつのことに気づきます。それは誰ひとりとして同じものをブロックで作ることがないという点。
井澤さんはレゴ®を用いる理由は表現の具体性にあると話されます。
「例えば『つなぐ』という言葉。自分の仕事の特徴をこの「つなぐ」という1語で表現した場合、誰かが「その“つなぐ”はどういう意味?」と問う人はいません。しかし、レゴによって『つなぐ』を表現するには、ある人にとっては梯子であり、ある人は色である。たった1語の「つなぐ」でも、一人ひとり違った「つなぐ」のイメージや解釈がありえるのです。言葉だけのコミュニケーションはすぐに解りあえた気になるところが危険です。私たちは全然解りあえていないのだという前提をおいてコミュニケーションを取ることが必要なのです。」

イメージを伝える場においては往々にして「つなぐ」「未来」「輝く」などの言葉を使います。そのワードを聞いたときに、自分がどのような解釈をしたのか、自分と向き合う意味でもブロックで形に表すということは有効だと言えるでしょう。

作ったものに必ず自分で意味付けをする

作ったものに無理やり意味付けをする

ワークショップでは、進行役が提示をしたテーマで参加者一人ひとりがブロックを使って作品を作ります。特徴的だったのは、その作品を同じテーブルのメンバーに紹介するだけでなく、作品について質問を受けて答える、という点。
他のメンバーに「なぜそのブロックなのか」「なぜその色なのか」と作品について聞かれたら、必ず何かしらの理由をつけます。間違っても「いや…なんとなく」「たまたまそこにあったから」などと答えてはだめで、「あえて言うなら」と言いながら後付けであっても自分の言葉で意味付けをすることにチャレンジしていました。
少しの沈黙をはさみながらも自分がなぜその選択をしたのか、質問されたメンバーが一生懸命に自問自答する姿も印象的でした。

課題意識を高め、視野の解像度を上げる

課題意識を高め、視野の解像度を上げる

プログラムを終えて井澤さんにお話を伺うと、
「今日は課題感を持った方々が集まったこともあって、ブロックを詳細部分まで形に表せていました。しかし、企業研修などをしていると、実は多くの方が細かく形に表すことができません。それは“解像度”を粗く世界を見ているから。日頃から課題に対して自分の目線で読み取ろうとしていない人は、意外と多いのではないでしょうか?新聞やニュースで知識は持っているので表面上ではきれいなことを言えるかもしれませんが、芯で受け止めていないのがブロックの形に現れてしまう。とてもざっくりとした粗い出来になってしまいます。」
と、多くの人が問題を自分ごととして捉えきれていない点を指摘します。
この“解像度”を高くするには、アウトプットを繰り返して自分の考えを確かめることがポイントであるそうです。

“意味付け”は自分自身の理解に繋がる

自分への理解で自分自身を取り残さない

また、終始伝えられていた“意味付け”をすることの大切さを次のように話されます。
「日頃私たちは常に選択を繰り返していますが、そこには無意識ではあっても必ず理由があります。なぜその選択をしたのか、どんな価値観を持っているのか、どんな癖を持っているのか、自分を知ることで無意識は意識に変わり、言語化できるようになります。
『地球を大切にしよう!』などと言われたとき、行動はできてもマインドが伴わないままであれば続かないでしょう。
どれだけ“自分ごと”として考えられるかが大切です。“意味付け”をする練習は、自分を理解するためにも大切なことです。」

まずは世界の現実を知ることから

まずは世界の現実を知ることから

ワークショップに入る前に、SDGsを考えるための知識を井澤さんは伝えます。基本的な認知度については世界平均60.3%に対し、日本はわずか16%(※電通調査)だそうです。

井澤さんに日本の認知度が世界平均を越える頃はどんな国になっていると思うか伺ったところ、
「一番望むべきなのは“無意識のレベル”になっているということですよね。例えばファッションなんかでは『エシカル(倫理的に良い)ファッション』というものが出てきて、意識的にそのファッションを選ぶ世の中ですが、本来はメーカーが全てエシカルな商品であれば良い話です。企業が変われば、実は消費者がわざわざSDGsを意識した選択は必要なくなるはずなんです。」
との考えを述べられました。

また、井澤さんはワークショップの中で、学びは「知る→わかる→できる」の順で成り立つことを伝えます。16%の認知度も100%になったところで、理解がされていなければ意味がなく、できる(=実践)が伴わなければゴールには辿り着けないことを参加者へ語りかけました。

近隣地域への貢献をめざしたい

近隣地域への貢献をめざしたい

このイベントを運営された、NEC Future Creation Hub KANSAI センター長の末吉さんは、
「参加された方は大きく分けて、SDGsへの興味と、レゴを利用したワークショップへの興味の2つに分かれていた印象です。ただ、最後に書いていただいた付箋には『今後の事業を考える視点となる』といった内容が見受けられたように、SDGsについて学んだことに加え、ビジネスにおいての考え方、ものの見方を学べたのは良かったのではないかと感じます。」
と振り返られました。
「OBPは多くの企業が集まるビジネス街ですし、一番身近な地域として改めて目を向けたいと考えています。OBPはここ3年ほどで活発化されている印象があり、改めてOBPのポテンシャルも感じます。OBPに対する貢献や繋がりの持ち方というようなことを考えたときに、今日のようなイベントによって外から人を呼び込むということも一つの方法で、SDGsは様々な人が集うのにぴったりのテーマでした」
とお話くださいました。今後もテーマや業界を絞った形でのワークショップ開催を計画されていくとのことです。

2030年、あなたの会社は大丈夫ですか?

2030年、あなたの会社は大丈夫ですか?

SDGsは一般的に「持続可能な開発目標」と訳され、17の目標は「貧困」や「飢餓」というワードから始まります。一見すると自分には遠いフィールドの話である印象を受ける方もいるでしょう。ひょっとしたら企業のCSRを考えなくてはならないために義務的に参加した方もいたかもしれません。
しかし、ワークショップを終える頃、参加者はSDGsをもっと身近な話に捉え、「誰一人取り残されない世界の実現」だと理解。多くの気付きを得た様子でした。

プラスチックストローが紙ストローへと変わっていっているように、2030年に向けて企業の在り方が問われる時代へ移行しています。SDGsへの取り組みがなされない企業は2030年に取り残されてしまうと言っても過言ではないでしょう。OBPエリアでも「誰一人取り残されないエリア」として発展することを願います。

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