vol.50 心安らぐ景色づくりに挑戦!草花で季節を楽しめる新たなOBPの風景

2021.11.15 更新

今、OBPでは「植栽」の切り口でまちの魅力を生み出そうという動きが起こっています。その始まりは2021年1月から(vol.46)。今回は、約10ヶ月の準備・調整期間を経て、遂に始まった植花プロジェクトについてレポートします!

OBPに生まれた大きな変化

OBPに生まれた小さな変化

今回取り上げる植花プロジェクトは、8月25日の会議をもってキックオフ。
OBP協議会には、環境共生の面からまちづくり推進をアプローチする「環境共生部会」があります。この日、会議では植栽活動のファーストステップについて話し合われていました。

本プロジェクトには、御堂筋一帯のコンテナガーデンや御堂筋の平野町街園を手掛ける株式会社グリーンチームの月ヶ洞利彦(つきがほらとしひこ)氏をパートナーに迎えます。

OBPに生まれた小さな変化

関係各所では、これまで、メインストリートである城見の交差点と、寝屋川沿いのプロムナード下の2箇所からスタートできるように、土地管理等の調整をつけてきました。

ビジネス街全体で植花活動に取組むことは、国内でも一歩進んだ事例

OBPは、一歩進んだビジネス街へ

1月に行われた環境共生部会主催のイベントにおいては、「世界を代表するテック企業GAFAMを始めとして、企業が働く人の健康や創造性向上のために積極的に植物を取り入れている」との話題が挙がりました。
ビジネスの現場と植物の関係性は、今や世界的に注目されています。

月ヶ洞さんによると、エリアをあげて動き出すビジネス街はまだまだ少ないそうで、OBPにポテンシャルを感じると話します。
「OBPは緑も溢れ、大阪の都心部であり、名だたる一流企業がオフィスを構える場所。ビル群が洗練されていて、お城もある素晴らしいエリアです。
今回実践する場所は、面積で見れば小さいのかもしれませんが、地権者の皆さんのご協力を経てこのように動きが始まりました。まずはこの事実がとても大きな出来事だと思います。
ビジネス街においては、国内でもこのようなアクションは少ないので、OBPは一歩進んだビジネス街だと言えるかもしれないですね。」

OBPに、毎日花と緑で安らげる景色をつくる

OBPに、毎日花と緑で安らげる景色をつくる

植栽プロジェクトの目的は、毎日通勤するワーカーの方々が抱える、通勤や仕事のストレスを癒やすような “景色をつくる”こと。
この景色づくりをしていくには “長期的に綺麗を維持する”という地道な努力が必要になります。

OBPに、毎日花と緑で安らげる景色をつくる

月ヶ洞さんは、
「毎日見る景色に花や緑があると、心がやすらぎ、やる気も出てきます。今回作りたいのは、年中楽しめる景色です。
植物が持つそれぞれのピークや、ピークを過ぎてもなお枯れた姿が良いと感じられる、植物の変化を楽しんでもらえるものにします。
しかし、これを話すと維持・管理はどうするのかという議論が必ず出ます。
確かに樹木の植え込みに比べると、草花は繊細で管理の手間がかかりますが、植え込みは管理が少ないがためにゴミの投げ捨てなどが頻発しやすい面を持っています。
『綺麗を維持したい』と思える場所を作ることで、ワーカーの方々も意識が少しずつ変わっていくはずです。
専門的な部分はグリーンチームでバックアップしますので、皆さんには『活動の意思を持ち続ける』ということをどうかお願いしたいと思います。」と話します。

枯れた状態すら美しい「ナチュラリスティックプランティング」

枯れた状態すら美しい「ナチュラリスティックプランティング」

植栽の大半は樹木で構成されているOBP。
今回のプロジェクトでは宿根草とオーナメンタルグラスをメインとする「ナチュラリスティックプランティング」を採用。これまでに見られなかった印象の景色を生み出します。

「ナチュラリスティック」とは自然主義的という意味。
植物の高低差・奥行き・立体感・色・葉の形・生育環境を踏まえて配置し、人が心地よいと感じる色合いを組み合わせ、自生している自然の風景を模したデザインで植栽を行うという植栽方法で、ここには高度な技術が必要とされます。

一般的には浸透していない手法ではあるものの、感度の高い若者の間では注目度が上がっているようで、「日本でもようやくムーブメントが起こり始めています」と月ヶ洞さん。

枯れた状態すら美しい「ナチュラリスティックプランティング」

宿根草は、多年草とも呼ばれる植物で、一年草のように花だけ楽しんで終わるのではなく、季節を通して成長過程を楽しめます。
花の咲く時期のほか、枯れた時期でさえ美しいとされます。
また、「ススキ」にあたるオーナメンタルグラスは、日本人も慣れ親しんでいる姿。秋の太陽に照らされると、キラキラと輝き、風に揺れる姿が見どころです。
見頃は、まさに今!

期待が膨らむ共生部会メンバー

8月25日の会議では、今後一緒にプロジェクトに関わる部会メンバーと意見交換の場も設けられました。
「ガーデニングによって景色をつくる」とはどういう意味なのか、多年草に対する知識がなかったメンバーは様々な疑問が浮かんできます。

「どこまで作り上げたら“景色”となり得るのか、最終ゴールのイメージが難しい」「天候に耐えられるのか?」「ビジネス街とナチュラリスティックガーデンの相性は良いのか?」
など、忌憚のない意見が寄せられた一方で、
「新しい発想が得られたので、楽しみだ」「専門家の方が居てくれることは安心」という期待の声も挙がりました。

ちなみに、ビジネス街とガーデンを合わせる事例とし知っておきたいのはニューヨークのハイライン、シカゴのルーリーガーデン
いずれもビル群とナチュラリスティックガーデンの不思議なコントラストが面白いので、ご興味のある方はぜひ一度チェックしてみてください。

待ち時間が楽しくなる城見交差点へ

待ち時間が楽しくなる城見交差点へ

会議から2ヶ月後…遂に10月、城見1丁目の交差点と、寝屋川沿いのプロムナード下に、それぞれのコンセプトを持ったガーデンが誕生しました。

交差点の四つ角は、欅(けやき)の木の根元。根っこが網目状に張られ、土を掘り起こすことのなかった土はカチカチに硬くスコップが入っていきません。

待ち時間が楽しくなる城見交差点へ

しかし、ガーデナーの手にかかればあっという間にふかふかの土へと変わっていきます。
休憩などで通りを横切るワーカーの皆さんも「なんだろう?」という表情を浮かべ、作業風景を見ながら通り過ぎていきます。

「まずは『なんだろう?』と思ってもらえるだけでも良いと思います。そのうちに、信号待ちでも『綺麗だな』などと感じ、お好きな方なら植物の種類が気になって私たちに話しかけてくれる…そうして徐々に一人ひとりの関心が高まっていくことがまずは大切です。」
と、作業をしながら月ヶ洞さんも話します。

草花の種類は約70種類!ナチュラリスティックガーデンを眺めてみよう

草花の種類は約70種類!ナチュラリスティックガーデンを眺めてみよう

もうひとつのガーデンは、京橋駅へと向かう空中通路「プロムナード」の下。寝屋川沿いの土手に約70種類もの草花を使ったナチュラリスティックガーデンができました。

オーナメンタルグラスと川の水の反射でキラキラとする、川沿いならではのデザインです。
ほかにも多種多様の宿根草と、ところどころに植えられる一年草との組み合わせに色も楽しめる場所となります。

草花の種類は約70種類!ナチュラリスティックガーデンを眺めてみよう

交差点も、こちらの寝屋川沿いも、植物が根付き植物のボリュームが十分となるには2年ほどの歳月を要するそうです。しっかり根付くことで土砂崩れ防止にも繋がるとのこと。
心が安らぐだけでなく、防災の観点からも植物の重要性を感じます。

京橋方面から来られる方は、地上を歩き、このガーデンの成長過程を楽しみながら通勤してみるのはいかがでしょうか。

日本でも有数のガーデナーが設計

日本でも有数のガーデナーが設計

今回OBPの植栽を手掛けたのは、グリーンチーム所属のガーデナーと、イギリスで長年ガーデニングを学んで来られたガーデナーの二人によるもの。

日本では「ガーデニング」=綺麗な花を均等に植えて花壇を完成させるイメージが強いかもしれませんが、ガーデニングの本場ヨーロッパでは「ガーデナー」と呼ばれる職業も成り立つほどに、ガーデニングは奥深い業界です。
ガーデニングに関して世界に遅れをとる日本においてガーデナーはまだまだ認知度の低い存在ですが、植栽においてガーデナーの力は必須だと月ヶ洞さん。

「草花という生き物を繊細に扱う職業であるガーデナーは、植物学者のような植物知識と、生態学者のような天候や環境を感じとる力と、デザイナーとしての美的センスに優れていないといけません。
通常、植栽地は、設計と施工で分かれていることが多かったですが、ガーデナーは、設計、施工、維持管理までを一貫して担います。」

場所ごとのコンセプトを意識して見ると一層楽しめる

場所ごとのコンセプトを意識して見ると一層楽しめる

グリーンチームのガーデナーの方へもお話を伺いました。
「日照条件、ビルとの相性、人々の動き、通路の高低差から生まれる視点の違いなどを計算しています。
例えば、交差点の四つ角では、最も人通りの多いIMPビル前に若い層から人気のカラーリーフを置き葉っぱを楽しんでいただけるように。ビジネス感のあるOBPキャッスルタワー(NEC関西ビル)には赤色の花の宿根草とオーナメンタルグラスで魅せ、都会的なコントラスト演出します。
また、飲食店利用者の多いツイン21前や、低木の緑が多い富士通関西システムラボラトリのビル側は、花のカラフルさを楽しんでいただくように一年草の花々とオーナメンタルグラスのランダムなミックススタイル。
このように、それぞれの場所に応じてコンセプトを考えています。」

まずは「花が綺麗だ」と感じることだけでも参加と言える

“ちょっと足を止めてみる”だけでも大切

月ヶ洞さんは今回のプロジェクトに参画されるにあたり、次のようにお話くださいました。

「お花に興味がある方からは、育て方のコツや、育てやすい植物についての質問を多くいただくのですが、そのように“興味を持ってくれている”ことが何より一番だと思います。
もっと言えば、『あ、ここに咲いている花が綺麗だなぁ』と感じるだけで十分です。
プロジェクトを進める側の立場からは、いきなり皆さんで土を触りましょう!とまでハードルを上げるのではなく、まずはどうやって気に留めてもらうかを考えたいところです。
最初は見ているだけだったけれども、少しずつ気になり出して、ある日は通りすがりに枯れた葉や花ガラを取ってみたりする。やがて植花活動に参加してみる。そうして少しずつ実践に移していってもらえたら良いなと思います。」

ワーカー参加の第一歩はネーミング応募

「知る」は興味・関心を持つことの第一歩。環境共生部会でも今後多くのワーカーの方々へ向けて、植物の種類や成長過程の情報発信に工夫していきたいとのこと。

10月にはワーカーの皆さんが参加できる最初の企画「ネーミング募集」が行われました。只今審査中・・・どんな名前になるのか楽しみですね!
結果発表や、今後のガーデンの様子は城まちSNS(FacebookInstagram)から発信予定です。
ぜひ成長過程を眺めて楽しむところからご参加ください♪

Wanted!

OBP Style では、特集記事のネタを募集しています。
OBP内のイベントや活動、人、場所あるいはOBPに対する疑問、もっと知りたいことなど。
大阪ビジネスパークに関するテーマ限定ですが、様々なテーマを掘り上げていく予定です。
ぜひこのテーマをというのがおありでしたらご一報ください。
ご連絡は『OBPスタイル編集部』まで 

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