OBPの未来 まち開き30周年記念シンポジウム リポート

4万人のワーカーが活動するまち“大阪ビジネスパーク”。
働き方や仕事の形が変化していく中で、まちのスタイル(あり様)はどう変わっていくのか。
OBPの今、そしてこれからについて、毎回テーマを決めてレポートしていきます。
第二回は、6月6日に開催された「大阪ビジネスパークまち開き30周年記念シンポジウム OBPの将来像を考える」の様子をレポートします。

これまでの30年をふまえ、これからの30年を考える。

2017年6月6日(火)ホテルモントレ ラ・スール大阪「朗鳴館」にて開かれた「大阪ビジネスパーク(OBP)まち開き30周年記念シンポジウム OBPの将来像を考える」。
30年を歩み、またこれからの時代を進もうとしているOBPについて、約170名の参加者が、様々な視点から考える場となりました。
シンポジウムは2部構成。第一部は、OBPの開発経緯や今後のまちづくりの方向性を熟知されているお二人の講演でした。

難波正人氏

「OBPの歴史と取り組み」

講演者/難波正人 氏
(一般社団法人大阪ビジネスパーク協議会相談役、株式会社竹中工務店 取締役執行役員 副社長)

エリアマネジメント50周年

難波氏の講演では、江戸時代の大名屋敷から始まって、戦前戦中の砲兵工廠、戦後の民間払い下げから現在の12社の地権者によるまちづくりに到るまでの歴史が紹介されました。
OBPのエリアマネジメントについては、1969年に槇文彦氏を中心に開発のパイロットプランが作成され、翌年OBP開発協議会が発足しました。このため2019年は、OBPエリアマネジメントの50周年にあたるということです。
1976年には日本初の民間による区画整理事業認可を受けたものの、経済的な変動もあり実際に着工できたのは1980年でした。また、1983年に開業した大阪城公園駅は、OBP協議会全額負担による請願駅という珍しい駅だそうです。

30周年を機に、OBPのリ・ブランディングへ

「OBPには、自然環境、IT・メディアの有力企業、公開空地による大規模なオープンスペース、地理的な防災安全性、文化施設・ホテル・大阪城、そしてエリアマネジメントというポテンシャルがある。けれど、まち開きから30年がたち、ウメキタ・中之島などのエリアの再開発が進んだことにより、OBPの魅力が低下している。あらためてブランディングが必要」と難波氏。リ・ブランディングに向けては、「リノベーション型スマートコミュニティ構築」や「京橋駅から大阪城をつなぐパークアベニューの活性化」などの実験を行うほか、建築協定の改定を行い、「業務・商業・文化」の建築用途に、新たに「教育・医療・居住(賃貸)」を加えて拡大を図るなど、さまざまな取り組みが始まっています。OBP開発協議会自体も、2015年に任意団体から一般社団法人化をとげ、現在は都市再生推進法人化を進めているとのことです。
また難波氏は、「今後は、これからの時代に必須のICT・AI・ビッグデータを活用したビジョン策定を目指したい」と語られました。世界規模で都市間競争が繰り広げられる中、大阪の輝きを増すような存在にOBPがなれるか、これからのリ・ブランディングに期待です。

川田均氏

「大阪市のエリアマネジメント」

講演者/川田均 氏
(大阪市都市計画局長)

大阪市都市計画、まもなく100周年

川田氏の講演は、大阪市都市計画局ならではの様々な都市空間の事例を交えたお話でした。
大阪市の都市計画は、まもなく100周年を迎えようとしています。その中で都市計画局では十数年前より、「都市機能」と「都市空間」の融合に取り組んでいます。
「人を中心とした都市空間」を再考し、心地の良い都市空間を徹底して作り、持続運営可能なエリアマネジメントにより都市の価値を上げることを目指しています。
海外の事例 [オークランド(ニュージーランド)、サンフランシスコ(アメリカ)、メルボルン(オーストラリア)、パリ(フランス)]では、道路空間を歩行者中心の空間へと再編したことで、どの地域においても歩行者行動の活発化に成功したそうです。
人の暮らし方・住まい方を踏まえた憩いの空間づくりは、大胆な再編が大阪でも必要だと川田氏は話します。

これからは、「ヒガシ」がポイントに

日本で初めての運用となる大阪版BID制度(エリアマネジメント促進制度)では、歩道・公共空間の維持を分担金で行い、それ以外のイベントなどは自主財源で実施されていますが、分担金をより自由度の高い使い方ができる枠組みになるよう国に働きかけています。
近年では梅田・なんばをはじめ、京都、神戸など各地区で社会実験や再編が行われています。そこで今後の重要ポイントとなるのは、OBP、京橋、森ノ宮エリアのある「ヒガシ」。
「大阪ではエリアマネジメント団体の管理のもと、休憩施設や空間活用を進めたい」と川田氏。OBPでは歩行者ネットワークの強化に取り組みたいと語られました。

最後に川田氏は、東京は一極に巨大なパワーがあり周りから中心へ人が集まる都市であり、一方、関西は様々な質(個性)を持つ場所の集まりだということでした。
それぞれの街が持つ個性に合った都市計画と開発が楽しみです。

OBPに最も近い人物が語る「次のOBP」

田ノ畑好幸氏

「OBPエリアの現状と課題」

講演者/田ノ畑好幸 氏
(一般社団法人大阪ビジネスパーク協議会運営委員長、株式会社竹中工務店執行役員)

OBP協議会が行っている取り組みとは?

第二部は、田ノ畑氏によるショートスピーチでスタート。まさに今、運営に関わっている現場ならではのOBP最新情報を知ることができました。
1969年の開発コンセプト「大阪都心東部地区の拠点となる『公園の中のビジネス街』」に基づき、現在、大阪城公園と一体となったエリアブランディングを行っているそうです。 取り組み方針は「大阪城公園の玄関口にふさわしい高質なビジネス街」、「豊かな公的空間を活用し、周辺エリアとの回遊性を向上するにぎわい交流空間の創出」、「低炭素かつ安全安心を追及した人と地球にやさしい街づくり」の三点。

「一般社団法人大阪ビジネスパーク協議会」は「理事会」「運営委員会」を設け、地権者12社により運営されています。
そして、「運営委員会」のもとに「事務局」「企画グループ」、そして3つの専門部会「都市再生部会」「環境共生部会」「安全安心部会」という体制でエリアマネジメントを行っています。

リノベーションでもっと賑わうOBPへ!

2016年よりOBPリノベーション事業の3カ年計画が進んでおり、エリアマネジメント強化・活力魅力・環境共生・安全安心、これらをテーマとした目標を掲げ、様々な計画がなされています。

<エリアマネジメント強化>
都市再生推進法人認定取得をめざしているとのことです。

<活力魅力>
けやき並木が好印象なパークアベニューは、歩行者中心の空間へリニューアルを計画中。2015年に通りを歩行者天国とした社会実験が行われましたが、アンケート調査では来街者、ワーカーの方の多くがリニューアルに賛同しているようです。
現在2案を並行検討中とのことで、楽しみですね。

<環境共生>
地域エネルギーシステムの構築を計画し、平成25〜27年度の3年間では、経産省・環境省の実証事業を実施されたそうです。OBP「V2X」プロジェクト、OBP「ソトコミ」プロジェクトが社会実験として行われました。5年ごとに測定しているデータでは、2015年時点で前回から2.4%のエネルギー削減を達成。エリアマネジメントにより人口・利用面積ともに増加する中では、エネルギー消費量の変化にも目が離せません。

<安全安心>
2015年に「大阪ビジネスパーク駅周辺・天満橋駅周辺地域都市再生緊急整備協議会」を設立され、防災に関する具体的な地域安全確保計画を策定されたようです。いつ来るかわからない災害への備えとして、2016年には大規模な避難訓練を実施、メディアには「OBP存在感」という見出しで取り上げられました。最終的にはOBPエリア全体での避難訓練実施を目指すそうです。安心してOBPエリアで過ごすために、このような訓練はやはり大切ですね。

大きく動き出す!2017年のOBP

パークアベニューの整備着手については今年大きな決断をしたい、と田ノ畑氏。
新たなビルも竣工する2019年はエリア人口がいよいよ5万人を目指す規模へと進んでいきます。
今後パワーアップするOBPに期待が膨らみます。

OBPワーカー、それぞれの想い

江口雅祥氏

「ネクストOBPセッション2017」

講演者/江口雅祥 氏
(大阪市立大学大学院工学研究科 非常勤講師)

OBPのワーカーが語った現実

ショートスピーチ二人目は江口氏。3月、4月と、OBPアカデミア「ネクストOBPセッション2017」を開催され、実際にOBPで働く人々とOBPの「現在」と「未来」について対話することで見えてきたリアルな声を発表されました。

アンケート調査により見えてくるOBPの印象は、働きやすさが約7割、街への愛着について約半数が賛同。一見好印象かと思いきや、誇れる街である認識は約4割、OBPで働きたいのは3割程度にとどまりました。年齢が上がるほどOBPは評価されるものの、OBP歴が長いほど評価していないという現実も。

実際にセッションを行い、声から見えてくるOBPのイメージは、「無機質」「仕事だけに来る場所」「留まる場所がない」といったマイナス評価が浮き彫りに。
一方で、「都会的」「大阪城公園や大阪城ホールとの近接」「音楽やランニングが身近」「企業が多いゆえの知識の場となる」といった点はプラス評価となりました。

OBPを知っているから湧き出る「未来」のアイディア

最終着地点についてアイディアを出し合うことをしたネクストOBPセッション2017。そこでは、木々や眺望などOBPならではの癒やし空間をもっと活用するアイディアが出ました。
更には、ワーカーにとってうれしい利用施設、ワークスタイル改革、プレミアムフライデーなどのイベントといった、企業の垣根を超えた”OBPワーカー”としてのコミュニティづくりの意見も出たそうです。
参加したほとんどの方が、OBPのまちづくりに取り組みたいと「OBP愛」を感じられるセッションとなったようです。

<参考>OBPスタイル 第一回記事で「ネクストOBPセッション2017」についてレポートしています。

パネルディスカッション「OBPの将来像を考える」

パネリスト/
松尾桂 氏 (前MCUBS MidCity 株式会社 代表取締役社長)
松尾恭志 氏 (KDDI株式会社 理事 関西総支社長)
松本英晴 氏 (住友生命保険相互会社 執行役常務)
木瀬浩平 氏 (讀賣テレビ放送株式会社 取締役)

コメンテーター/
田ノ畑好幸 氏(一般社団法人大阪ビジネスパーク協議会 運営委員長)
江口雅祥 氏(大阪市立大学大学院工学研究科 非常勤講師)

コーディネーター/
嘉名光市 氏(大阪市立大学院工学研究科(都市系専攻)教授)

それぞれの位置から見たOBP

パネルディスカッション

最後は企業4社からパネリストを迎えディスカッションが行われました。嘉名教授によるコーディネートでショートスピーチのお二方も交えた総勢7名によるパネルディスカッションでは、OBPの未来についての意見交換となりました。

松尾桂氏は、地盤の良さと、緑が多い落ち着いた環境がある点がOBPの魅力ではあるが、短時間で大きな成果を求められる現代の働き方において、その憩いとなる空間が活かされず「働く」ことへのモチベーションを上げる場所にはなっていないと考察。
クリエイティブな仕事のためには、「五感」で楽しめる街であることが重要とのことでした。

松尾恭志氏も、やはり「憩い」の空間が魅力である一方、どこか“ワクワク感”に欠けてしまう点を挙げ、多くの女性社員は業務後梅田に繰り出してしまうそうで、就業後に楽しめる街になってほしいとのご意見。
情報技術が発達しスピードを求められる世の中で、いかに“ワクワク感”を生み出せるか、二歩も三歩も先をいく仕掛けが必要との見解を示されました。

松本氏は、長くに渡りOBPを知る立場として、昔は見晴らしの良い広大な土地だったのが今や全てビルで埋まることは感慨深いと話された上で、働き手の本当のニーズを掴まねばならないが、まだまだ真の“本音”は聞き出せていないのではないか、外から人を呼び込む前に中の人(ワーカー)にとってどんな場所にすべきか考える必要がある、もちろん取り組みについてはコスト面も大切であると、エリアの主役とも言えるワーカーを中心とした視点で述べられました。

最後に、木瀬氏。新社屋では「にぎわいエリア」を創設することで一般の人々が自由に入ることができる空間を設けることを踏まえ、今はオフィス街に特化しているがゆえ、エリアに住人がおらず、毎日朝来て夕方帰る=リセットされてしまう流れがあると分析。「立ち止まらずに通り過ぎる街」との表現をされた上で、これを打破したいと力強く述べられました。

それぞれの視点から見たOBP、共通することは「オフィス街ゆえの無機質感」でした。まずはOBPで働く人々がワクワクした毎日を過ごし、仕事の合間にリラックス、仕事終わりに寄り道できるような、サードプレイス的な空間作りが求められているのかもしれません。
また、田ノ畑氏によるとOBPエリアの女性が集まり「OBP女子会」なども最近は開かれているようです。就労人口の4割が女性であるということから、街の活性化に欠かせない女性パワーにも期待したいところです。

ワクワク!が大切。次世代OBPに期待!

まち開きから30年。OBPにはこの期間積み上げてきた企業間の信頼関係があることや、互酬性があること、これらが何より強みであると語る嘉名教授。
OBPのまちづくりにおいては、主役であるワーカーの方々を楽しませられるか、大阪城公園や京橋、森ノ宮など周辺エリアといかに協力関係を深めて化学反応を起こせるか、この2点が、OBPの価値を上げていくキーポイントになることは間違いないようです。
各企業が集結するからこそ出せる“OBPならではの魅力”。これをどのような形で生み出していこうか、OBPの将来像にワクワク感が垣間見えたシンポジウムとなりました。

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